6. 周産期・新生児医療の現状と今後
大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科 窪田昭男
(日本周産期・新生児医学会理事) |
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周産期・新生児医療は母として子としてのスタートを、健康で幸せな未来に向けて切ってもらうための医療と言える(名取理事長)。日本周産期・新生児医学会は周産期・新生児医療の更なる進歩のために、その医療の根底となっている日本新生児医学と日本周産期医学が2004年に併合して発足し、同年、第40回の学術集会が開催された。本学会の大きな目標の一つは「周産期専門医を世に送り出すこと」であり、2007年に最初の周産期専門医(新生児)が誕生し、2009年には周産期専門医(母胎・胎児)が誕生する予定である。これらの専門医は高度のレベルが必要とされる異常妊産婦や病的新生児の医療に大きく貢献するものと期待されている。また、2007年には新生児蘇生法講習会が開始され、新生児医療のボトムアップに寄与している。両学会が併合したもう一つの重要な目的は「社会への貢
献」であり、実際に大きく貢献してきた。しかしながら、わが国の周産期死亡率、新生児死亡率が世界の最高レベルであるにも拘わらず、今、周産期・新生児医療は産科医および新生児科医不足のために危機に瀕しており、今後も今まで通り社会に貢献出来るか危ぶまれている。
一方、わが国の周産期・新生児医療レベルを世界のトップレベルにした要因には呼吸・循環障害、脳室内出血、感染症、消化管穿孔などに対する繊細な管理は勿論のこと画像診断が果たした役割も無視出来ない。出生前診断・治療に画像診断、特に超音波検査は不可欠であり、むしろ画像診断そのものと言っても過言ではない。不正確な診断は時に尊い命の中絶をもたらすこともある一方、生涯に亘る重篤な後遺症をもたらすことにもなり得る。周産期医療における画像診断ほど医学的にも倫理的にも正確さが要求される領域はないと言える。今日、新生児死亡率の最も高い疾患は低出生体重児の消化管疾患であるが、ここにおいても画像診断の果たす役割は大きい。
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