3. 小児内視鏡の現状と今後
東京都立清瀬小児病院 小児外科 鎌形正一郎
(日本小児内視鏡研究会 代表世話人) |
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日本小児内視鏡研究会は本年の7月に第35回研究会が開催された。参加施設は63で、構成は小児外科47、小児科10、成人内視鏡科6である。
第1回研究会は、1974年に小児の内視鏡検査の必要性を痛感した小児外科医、成人内視鏡医らが集まり小児外科学会のevening sessionとして開催されたのがはじまりである。当時は、胃の二重造影法が確立して早期胃癌の診断が飛躍的に改善し、成人の内視鏡検査が積極的に行われるようになった時代である。内視鏡の機種も胃カメラの時代からファイバースコープへと進化し、直接消化管の内腔を観察することができるようになった。
第1回から10回までは、小児における内視鏡検査の実技に重点が置かれ、内視鏡メーカーの協力体制を得て小児用スコープの開発や機器の細径化などがすすめられた。同時に、麻酔科や呼吸器科、泌尿器科の医師が参加し、1)小児用の機器の開発、2)安全な麻酔、3)小児の合併症、4)特殊内視鏡などが議論された。第11回(1984年)からは日本小児内視鏡研究会として独立し、臨床応用の拡大、成人消化器内視鏡医との交流を積極的に行いつつ、機器の改良を図った時期であった。第21回よりは小児科医の参加が増加する一方で、呼吸器科・泌尿器科医の参加が減少している。
この30年間に、ファイバースコープが電子内視鏡になり特殊内視鏡や硬性鏡についても小児用の機器が開発され細径のスコープや処置具の改良によって、観察や診断目的だけでなく内視鏡的処置や治療を行うことができるようになった。消化管・気道狭窄の拡張、食道・胃静脈瘤の硬化療法・EVL、消化性潰瘍の止血、ポリープ切除、レーザー治療、胃瘻造設などはそのよい例である。近年では診断・処置を小児科医が受け持つ施設が増加しており、外科領域では鏡視下手術の飛躍的な発展とともに日本小児内視鏡外科・手術手技研究会が設立されることになった。
小児の内視鏡で問題になるのは、教育・トレ−ニングであり我が国ではまだ十分な体制が整っているとは言い難い。いくつかの施設でトレーニングシステムが試行されているが、疾患・症例数を含めて成人内視鏡医との連携が必須である。一方で、内視鏡検査は時に全身麻酔を必要とし侵襲的な場合がある。近年になって超音波検査や3DCTなど画像診断が急速に進歩し、放射線診断が格段に進歩した。MRCPの普及やvirtual内視鏡の小児例報告などがその例である。今後より安全で侵襲の少ない検査が期待されると同時に、内視鏡検査と放射線診断の役割分担が求められる。
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