2. 小児がんの現状と今後
広島大学病院 小児外科 檜山 英三
(日本小児がん学会理事長) |
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日本小児がん学会は、日本小児がん研究会から発展した学会であるがゆえに、小児の悪性腫瘍を扱う小児科、小児外科、放射線科、脳外科、整形外科、病理、基礎医学などの幅広い領域の医師や医療人からなり、2008年10月の時点で、会員総数1472名、評議員数210名の特定非営利活動法人である。小児がん専門医は、その基盤学会である日本小児科、小児外科学会の専門医のもとに欧米のPediatric hematology oncologyの専門医をめざして、日本小児血液学会と共同で構築し、まさにその制度が開始されるところである。この専門制度は、がん診療への国民の期待に答えるべく、成人領域までの幅広い知識をもって小児血液疾患・がん疾患に精通した専門医を育てることをめざし、がん治療認定医の制度を一階建てとして構築している。その中では、この専門医を育てる教育施設の役割が最も重要であり、ここには小児薬物療法のみならず、放射線科をはじめ、小児外科、病理、整形外科、脳外科、精神科、さらに緩和医療、小児がんの看護師などのスタッフが揃っており、年間に一定数以上の小児血液・がん疾患を扱うことで、最新の医療レベルが提供され、知識と技能を兼備えた専門医を輩出できる施設であるべきであり、10年後を見据えた専門医制度を構築している。
日本小児がん学会において、2008年には第24回学術集会が日本小児血液学会、日本小児看護研究会と同時期開催として幕張で開催された。小児がんの診断・治療に関しての教育講演から、最新の基礎研究ならびに臨床研究が多領域の専門家のものとで活発な討論が行われた。また、小児がんの医療としては、トータルケアというキーワードを掲げてここ数年の学術集会が行われており、診断、治療だけでなく、合併症、長期予後、緩和、社会支援など多方面の問題が取り上げられ、さらに国際化などの問題や医療行政に踏み込んだ議論を内外からの有識者を招いて活発に議論された。その中でも、放射線診断、治療は常に関わってくるところであり、常に理事会には小児放射線医が加わり学会を運営している。
このように、小児がん領域における放射線医学は、画像診断における重要性はもとより、放射線療法が薬物療法、外科療法とならぶ3本柱の一つとなっている。放射線診断や治療は本来、小児放射線科医に委ねられるべきであるが、小児領域を専門とした放射線科医はまだまだ少ないのが現状であり、多くの施設では放射線科医と連携して診療を行っている。そこで、小児がんを取り扱う医師は、実際の診療の場では画像診断として何を行うべきかという知識を有し、またその結果へのある程度の読影力は必須であり、また、治療においても最近の放射線療法の進歩ととともに、その有用性と限界、さらに合併症を理解して小児がん患者に対処すべきであり、小児がんの専門医をめざす医師には、カリキュラムの一環として組込むべきものと考えている。そこで、最近の小児がん診療の進歩とともに、その中での放射線診断、あるいは放射線療法の位置づけを概説し、小児がんを取り扱う医師の立場での放射線医学への修練のあり方と、施設の放射線科医や全国におられる小児放射線科医と連携のもとにどのような体制で今後小児がんの診療を行い、それを支える基盤を構築すべきかを述べる。
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