1. 小児外科の現状と今後
東京大学大学院医学系研究科 小児外科 岩中 督
(日本小児外科学会副理事長) |
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日本小児外科学会は、日本医学会の分科会で2008年8月末の時点で、会員総数2304名、評議員数343名の特定非営利活動法人である。小児外科専門医は、その基盤学会である日本外科学会の専門医制度と深く関わりを持っており、外科専門医を取得後さらに3年近い小児外科臨床の修練を重ね、専門医試験に合格したもののみがその資格を取得することができる。専門医試験の合格率は毎年約60%前後であり、平成17年の調査で65歳以下の専門医数は455名であった。この専門医を取得後、学会専門医制度で指定された様々な新生児・乳幼児手術を一定数以上経験し、学会発表・論文執筆などの学術業績を積み重ね、医師免許取得後15年以上経過したもののみが、日本小児外科学会の指導医の申請を行うことができる。同様に平成17年時点の指導医数は211名であった。この指導医、専門医はそれぞれ毎年平均で約12名、19名ずつ増加しており、今後専門医取得・更新要件がさらに厳しくなっていくものと思われるが、10年後の専門医数はおおよそ現状維持が可能と考えられている。
日本小児外科学会総会は、2008年に第45回学術集会がつくば市で開催された。食道閉鎖症、高位鎖肛、腸閉鎖症などの新生児外科疾患、胆道閉鎖症や膵・胆管合流異常症などの乳幼児疾患、神経芽腫などの小児悪性腫瘍などの診断治療は当然のこと、さらに低侵襲手術である腹腔鏡・胸腔鏡手術、胎児診断・治療、肝移植・小腸移植、組織・臓器再生医療などの幅広い領域の医療が、基礎研究・臨床医学の多方面からのアプローチで検討された。さらに最近の学術総会では、小児医療を取り巻く環境などの社会問題や医療行政に踏み込んだ議論も有識者を招いて活発な議論が始まっている。
小児画像診断の進歩は小児外科領域の診断・治療を大きく変革させてきた。最近の画像診断の読影は(小児)放射線科医に委ねられる機会が多くなってきたが、臨床研修医や若手医師は、研修の一環として必ず自ら読影せねばならない。またコンピューター処理の進歩により既製の3D画像が容易に手にはいるようになったが、一般の2D画像のスライスを自身の頭の中で積み上げ、3Dイメージを構築する訓練はあいかわらず大変重要である。執刀医は、自身の経験の有無にかかわらず、このイメージを用いて切除可能性(大血管との関係、切離線の設定など)や腹腔鏡などのアプローチ法の選択、などの仮想手術を術前に試みている。数少ない症例に対して中身の濃い手術を行うことにより、また稀な疾患に対しても安全性、正確性を担保できる手術を選択することにより、執刀医の実体験は倍増する。単なる診断でなく手術を前提とした外科医の画像読影について私見を述べる。
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